侵襲性歯周炎の患者さん(その2)
あちこちに虫歯や歯茎があ腫れた場所があったので、パノラマレントゲンを撮ってみると、歯を支える歯槽骨がかなり吸収していることがわかりました。 侵襲性歯周炎といって10〜30歳代の若い時期に歯を失ってしまう方がいます。
侵襲性歯周炎の罹患率は、0.1〜0.05%といわれ、1000〜2000人に一人の割合です。
ご両親や、祖父母に早期に歯を失った方がいれば、もしかしたら、侵襲性歯周炎のリスクがあるかもしれません。
初診時の口腔内写真です。
右下の銀歯は、半年以上前に外れたまま放置、左上六番 左下六番は、被せ物が外れたまま放置した結果、虫歯が進み、根っこが残った状態になっていました。
お口に関心がなく、どこか痛くなれば歯医者に行き、治療を受けるとといった状態でした。
また、喫煙者で1日20本、10年以上吸っている状態でした。
家族の母がたの祖母が早期に歯を喪失しており、侵襲性歯周炎が疑われました。
上前歯が、前歯に突き上げられて、前歯が開いてくる、フレアーアウトと呼ばれる状態でした。
本人も夜間就寝時の嚙みしめを自覚しており、下顎前歯部の裏側や、上顎の奥歯の頬側に骨隆起という骨の出っ張りが認められ、噛む力や、嚙みしめによる力の関与が疑われました。 歯周病の検査の結果です。
歯周病の検査は、ポケットプローブと言われるメモリのついた針のような器具で、歯周ポケットの周りを測っていきます。歯の周囲を6点の場所で測ります。3ミリ以下健康な状態で、数値の大きい場所ほど、歯周病の進行度は悪くなります。5ミリを超える歯周ポケットの場合は、歯周外科治療の対象にになります。
私は、患者さんに、信号に例えて、
3ミリ以下 青信号 4ミリ 黄信号 5ミリ以上 赤信号
と説明してます。
また検査の数字には、赤と黒の数字があります。赤い場所は、歯周ポケットの測定時に出血してきた場所を示します。出血は、その場所に炎症があり、そこに歯周病菌がいることを示します。
この患者さんは、6ミリを超えるポケットが、48.3%でした。また出血している場所が、67.2%でした。
かなり重症な状態だとわかりました。
歯周外科処置が必要になる状態でしたが、この患者さんは、喫煙者でした。
喫煙されていると、口腔内の血行が非常に悪く、免疫機能が十分に働かない状態
になっています。
そのため、外科処置をしても予後が悪くなると判断いたしました。
以下に、この患者さんの問題点とその対策を示します。
口腔内に関心がなく、口腔清掃が不良で、歯科には痛みがあるときだけ通っていた事
現状を理解してもらい、歯を少しでも長持ちせるために自分自身で歯を守っていけるよう、デンタルIQ向上させる
喫煙者である事
喫煙の影響で、歯周病がさらなる重篤な状態になる可能性があること、
歯周病をきちんと治療しようと思ったら、禁煙が必要になることを説明し、禁煙支援をする
32歳で上下顎の歯槽骨は、高度に吸収している事
徹底的な歯周治療
歯肉の上の部分は、患者自身で、歯肉のしたの部分は我々(歯科医師、歯科衛生士)が徹底的にバクテリアを除去する。
上下顎に骨隆起がみとめられ、歯槽骨の吸収に力の関与が疑われる事
パラファンクションの排除にナイトガード
治療開始 禁煙支援しながら、基本歯周治療を行い、禁煙できたら、歯周外科処理まで行うように治療計画を立てました。
禁煙は、できませんでしたが、減煙には成功し、1日5本以下になりました。
衛生士によるスケーリングルートプレーニングと患者自身によるブラッシングだけでも、かなり歯肉の炎症も改善されました。
レントゲンでも歯槽骨(歯を支える骨)の改善を認めます。しかし、ポケットのは残存したままでした。
実はここまで、1年半かかっております。
長年染み付いた生活習慣や口腔衛生を改善することは、容易ではありません。
歯磨きの状態は、上手になったり、サボったり、を繰り返しながら少しずつ改善していきました。
治療から1年たった治療中の写真ですが、黄色で囲んでいる歯の裏側(特に歯と歯の間)は改善していません。
磨けていないところを、汚れを赤く染め出して確認した後、ブラッシング指導したりしながら、歯を少しでも長持ちせるために自分自身で歯を守っていけるよう、デンタルIQ向上させていきました。
以下の写真で随分、よごれとれ改善した様子がわかると思います。